「1+2+3+4+… =-1/12」だという人がいます。数学の得意な人です。ところが、「無限大まで加え続けて、右辺の数値になるわけがないよ」というのが普通の人です。
コーシーやオイラーの業績を踏まえ、あるいは、リーマンのゼータ関数を用いると、その等式が成り立つそうです。ところが、無限の数列を扱うにはコツというのか勘どころがあります。それを巧みにコントロールして、知らない人たちをけむに巻いている人がいます。近世版ソフィストです。古代ギリシアで「智が働くようにしてくれる人」「教えてくれる人」を意味するソフィストですが、詭弁に長けていたように当時から思われていたのです。
その式を眺めて、「それ、誤っている」と拒絶する人は、自分の枠組みをベースにしていますから、その枠組みに合致した詭弁に乗ってしまうのです。「ああ、あれだなあ。それ、おかしいよね」と思える人は、受けいれているので、その詭弁の部分が見えるのです。
この左辺の無限級数の和が、右辺のように決まるという説明は、特別なことなのです。ゼータ関数を用いて証明をするときに、条件がちらちらと見えています。それを子供にも分かるような数式を用いようとすると、それが抜け落ちるのです。
1+2+3+4+… =-1/12
その一般的な証明は、次の通りです。
元の式の左辺を
A=1+2+3+4+5+6+……
とする。
次のような数列の和を用意する
B=1-2+3-4+5-6+……
C=1-1+1-1+1-1+……
AとBから
B-A=(1-2+3-4+5-6+……)-(1+2+3+4+5+6+……)
=1-2+3-4+5-6+……-1-2-3-4-5-6-……
=(1-1)+(-2-2)+(3-3)+(-4-4)+(5-5)+(-6-6)+……
=-4-8-12-20-24-……
=-4(1+2+3+4+5+6+……)
=-4A
よって
B-A=-4A
B=-3A
A=-B/3
また、BとCから
C-B=(1-1+1-1+1-1+……)-(1-2+3-4+5-6+……)
=1-1+1-1+1-1+……-1+2-3+4-5+6-……
=(1-1)+(-1+2)+(1-3)+(-1+4)+(1-5)+(-1+6)+……
=0+1-2+3-4+5-……
=B
よって、
C-B=B
C=2B
B=C/2
そられから、
1-C=1-(1-1+1-1+1-1+……)
=1-1+1-1+1-1+1-……
=C
1-C=C
1=2C
C=1/2
A=-B/3=-C/6
より、
A=-1/12
となる。
よって 1+2+3+4+… =-1/12
と説明されます。
その説明は、なかなかおもしろいと思います。巨大な数値になる元の数列を、意味があるものにする数列に変換しているのです。自然数が無限大になるまで、加え続けていた元の式では、無限大を超える無意味な数式でした。加算、減算を繰り返すことで、そこから抜け出したのです。しかし、右辺のようにある数値になるというのは、数式遊びのときだけで、イメージが貧困なのです。
この証明の数式を眺めていたときに、「……」の最後は「+(∞-2)+(∞-1)+∞」「+(∞-2)-(∞-1)+∞」「-(∞-2)+(∞-1)-∞」です。ということは、ある条件下でしか、特定の数値にはならないのではないかと想像ができたのです。ゼータ関数を用いて証明するときに必要だった条件があったはずです。その拡張の仕方を誤ると、無意味な式になることが分かるのです。