汎神論は、人類のおよそ普遍的な共通認識だろうと考えます。汎神論そのものが、確固たる概念を有していないためです。汎神論は、すべての物や概念、法則が神の顕現、あるいは神そのものであるとします。信仰は、汎神論的傾向を基礎にします。
汎神論は、信仰上の矛盾をはらみます。すべてが神、あるいは神の現れであるのならば、神を扱おうとする人間そのものが神、あるいは神の現れとなります。それは無意味であり、また、宗教的指標で計る人の犯す罪、そのものを扱うことができなくなるのです。
汎神論には異なる二つの方向があります。「神が全てである」と「森羅万象が神である」は、意識する方向が異なっています。前者では、宇宙は、神や自我の様態または仮象と見なします。つまり宇宙の実在を認めないことになります。後者では、世界に神が及びます。その世界は実在していますから、その神はその世界に内在しているのです。アニミズム的な神道では、後者の立場に立ち、森羅万象が神性を負います。
実在する世界に神が内在するとき、その世界は、神そのものではありませんから、唯物論的存在を認めることができます。つまり日本人にとっての世界は唯物的存在であり、神性がすべてに及んでいると考えているのです。