あなたのご両親は、あなたを授かったとき、決めたのです、自分たちの楽しみごとよりも、この子のためにがんばろうと。何もできない赤ん坊を抱きながら、親馬鹿かもしれないと知りながらでも、世界で一番かわいらしく、いとおしく思ったのです。
赤ん坊のあなたの面倒を見ることがどれほどにたいへんか。昼といわず、夜といわず、あなたはお構いなしに、起きたり寝たり、ミルクを催促したり、大小便を出したり、そして歩き始めると、なお目を離すことができないのです。言葉を話し始めるまでは、何を求めているのかも分からず、もちろん話し相手になるわけでもありません。そうしたあなたを見守ってきたのはご両親以外にありません。
あなたに大事な恋人がいるかもしれませんし、あなたが慕っている先生がいるかもしれません。恋人が、アクセサリーを買ってくれたかもしれませんし、おいしい料理を作ってくれたかもしれません。先生の言葉があなたの奮起を促したかもしれません。それもまたあなたへの思いがあってこそです。あなたの幸せな時間だったことでしょう。しかし、その相手からの愛情に、いくらかでも報いることができたのではないでしょうか。
あなたの服を用意し、学校に行かせ、病気だと言えば、付き添って看病し、学校の成績や、将来の役に立つだろうかと考えて塾に行かせ、恋愛や結婚の心配をし、就職を考え、小遣いが足りているかと心配してくれるのは、ご両親です。よけいなお節介だと、言いたかったこともあるかもしれません。しかし、そのお節介をし続けてくれるのは両親だけです。恋人や先生ではありません。ましてや、仲がよくてもご近所の人などでは絶対にできないことなのです。
お父さんの仕事が大したことがないように思えても、おかあさんの家族への配慮が足りないように見えても、今日まで、あなたを慈しみ、育ててくれたのはご両親です。あなたを全力で愛してきた両親のことにあなたが気づいたときには、あなたの記憶にあるお父さんやお母さんよりも、ずっと小さな姿になっています。何年も何年も、ずっと気にかけ続け、報われることを期待しない両親の愛情に勝るものは、どこにもありません。
両親には、感謝しても感謝しても返せない恩があるように思います。
写真「子供の寝顔」 by crow
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