物を落とすという粗相(そそう)をしたことが、はじめに問題なのですが、天津甘栗を動物の霊が欲しがって床に落ちたのか、何かのお知らせなのかといろいろに思いめぐらせました。
私が子供のころ、食べ物を落としたとき、水で洗ったり、息を強く吹きかけ、汚れを払って口にしたのを見たことがあります。当時はそうするものだと思っていました。
ところが落とした物を食べる姿を、最近、周囲で見なくなりました。床に落ちた物を食べるのは、衛生的でないかもしれませんし、ゲンも悪いでしょう。だれもが行儀がよくなって、粗相をしなくなったのか、隠れて洗って食べるのか、こそっと捨ててしまうのか、「もったいない」という言葉を発する機会もないのです。しつけが十分できて、大事に物を扱うことができれば、物を床に落とすことがないような振舞いができるでしょう。
わたしたちは、食べ物を大事にすることと、食べ尽くすことが同じではないことを知っています。しかし食べ物を大事にできないならば、自分をさげすむことになりそうだと気づきます。